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短編集【果物籠】

第3章 そろえましょ【夾】



彼らの話によると、今日のお花見の時に紅葉に慰めてもらっている所を、紅葉のスマホを使って夾とビデオ通話を繋いでいたらしい。

そして、その場面を見せるだけ見せると何も言わずに切られたのだった。

そこで激昂した夾が、紅葉や春に鬼電するが勿論出ず。

私に連絡を何度もするが、消音モードにしていた私は気付かず。


焦りに焦った夾は仕事を早めに切り上げてダッシュでこちらに向かい、今に至る…と言うことだそうだ。



「いや、待って。未だに混乱。ちょっと整理出来ない」


夾がいる。
ずっとずっと会いたかった、声が聞きたかった夾が目の前にいる。

だが、素直に喜べないのは…。


「あのなぁ!俺は断じて浮気なんかしてねぇーからな!?」


私の両肩をガッと掴み真剣な眼差しで言う夾。

あぁ、そっか。
屋上でのことをライブ配信されていたのなら、私が言ってたことも全部伝わってるのか。

と、理解はしたが正直疑ってしまう部分が多くて、彼と目を合わせられなかった。


「キョーのウワキモノー!」

「浮気、ダメ、絶対」

「うっせぇ!黙れクソガキ共!!!お前ら知ってるだろーが!!」


怒鳴りつけた夾の最後の言葉に、え?と夾を見上げたあとに紅葉と春の顔を見てみるが意地の悪い顔をしているだけだった。

え、もしかしてみんなで私を騙してた…?
浮気してるの知ってて黙ってたってこと…?


一気に奈落の底に落とされた私は涙すら出ず、視線を下に落とす。


「ま、そういうことで。俺らはもう用済みってことで」

「これ以上ひまりのこと泣かせたらホントーのホントーにヒョイって連れてくからねー!分かったキョー?」

「黙れ!誰が渡すか、さっさと散れ!!!!」


紅葉と春が帰っていくのにもなにも反応が出来ずに下を向いていた。
するとまた夾にギュッと抱きしめられる。

色々と感情が追いつかない。
え?何が本当で何が偽り??


「あー…不安にさせて…悪かった。マジで。違ぇから。浮気とか絶対しねぇから」


私を抱きしめながら耳元で呟くように言う夾の声に、きゅんっと胸が縮む。


「じゃあ…何で…連絡…」


こう言葉にするのが精一杯で、夾は問う私を抱きしめる力を更に強めた。
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