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短編集【果物籠】

第3章 そろえましょ【夾】



紅葉と春に連れてこられたのは学校の屋上。

3人が余裕で座れるくらいの大きなレジャーシートを敷き出す春と紅葉を茫然と見つめている。


「…いや、ダメでしょ何してんの」

「何って…お花見」

「はいひまりも座って座ってー!オハナミはじめるよー」


お花見と言っても桜はまだ咲いてないし、っていうかお花見って桜の木を見上げながらするものじゃない?
桜の木を見下ろしながらするもんじゃないでしょ…

なんて頭の中で突っ込んでいたが、それを言ったところでこのお花見なるものを辞めるとは到底思えず、渋々レジャーシートに座らせてもらう。

紅葉が持っていた袋の中から出してきたのは、お弁当ではなくお菓子とジュース。

いや、そこはお弁当でしょっ!なんて手ぶらの私が言えるはずもなく、手渡されたジュースを「ありがとう」とお礼を言って受け取った。


「それでっ?キョーとはどうなの?失恋引きこもりニート決定?」

「失恋…はエグりすぎ。ぼっちニート…ぐらいにしてやって…」

「どっちもエグってるからね!?っていうかまだ失恋決まってないし!?」


私が落ち込んでるのを慰めようとお花見をしてくれたんだと思ったらコレか。
とことんエグってきやがるマジで鬼か。


でも


「ツゴーのイイ女から脱出するチャンスだよー?」

「うるさいっ!夾はそんな悪い男…じゃない……と思う…」

「既に自信なくなってる」


こうしてギャーギャーしてる時間はマイナスな考えにならないし、気が紛れる。
それは感謝してる。本当に。


「だーかーらー。ボクにしときなよって言ったのにー。今からでもボクにノリカエしてもいいんだよー?」

「無理。却下。ピュアな心を失った紅葉なんて嫌です。精神やられます」

「……現在進行形で夾に精神やられてるけど…」

「みなまで言うな春!!!!」


お花見という名の私をいじり倒す会は気がつけば太陽が真上に来る時間になっていた。

その頃にはお酒なんて飲んでないのに私は出来上がってしまってて


「卒業したら迎えに来るってさぁ、もう卒業だよ!?なーんも決まってないし。あり得る?私ガチでニートなるじゃん」


こみ上げてきた感情で耐えていた涙が視界を歪ませていた。
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