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短編集【果物籠】

第3章 そろえましょ【夾】


何もヤル気がでない。

休みに入ってから1週間。

夾からの連絡は相変わらずで。

本来ならもうすぐ迎えにくる筈の夾を思い描いてウキウキしながら引越しの準備でもするんだろう。

だがもう私を支え続けてきた約束ですら疑わしくなってきた。

だって、まともに連絡も取れないからいつ引っ越すかとか具体的なこと何も決めてないし!?
え、待って。私卒業後は夾の道場手伝う予定だったのに、このまま振られたら就職先未定に逆戻り!?
ニートですか。
お先真っ暗ですか。

もうこのままこの体が溶けて無くならないだろうか。


沈んだ気持ちと共にベッドに体を沈み込ませていると、突然着信を知らせる音楽。
バッと勢いよく体を起こしてスマホを手に取る。

夾!?電話!?

とはやる気持ちを抑えつつ画面を見て落胆する。

電話に出ると相手の言葉を待たずに私から話し始める。


「ただいま留守にしておりまーす。ピィーという」

『ひまりオハヨー!元気にしてる?それとももうフラれた?』

「……ただいま留守にしております。ピ」

『10分後にハルとお迎えに行くからねっ!ジュンビしててねーっ』


こちらの言葉は全無視で一方的に切られる電話。


ちょっと待て。ナメてんのかあの金髪&白髪は。


心の中で悪態を吐きながら画面の時計を確認する。

あの2人のことだから冗談ではなく必ず10分後にくる筈。

年頃の女子に寝起き10分で準備しろとか鬼か。悪魔か。
いや出来るけれども。

ベッドから立ち上がり、重たい体を引きずるようにして準備をし始めた。






「おっはよー!今日もとってもチョーシが悪そうねー?ひまり」

「…おはようキンパツ&シラガ。すこぶる調子が悪いので帰ってもいいでしょうか」

「ダメだよ、ひまり。今のままだと、引きこもり廃人確定」


大きな荷物を持って玄関前に立っていた紅葉と春は、当たり前のように私の腕を掴み引きずるように何処かへと向かい始める。

春は元々背が高かったが、入学式の時は私よりも背の低かった紅葉に見下ろされているこの感じにも腹が立ち、じっとりと睨み付けるが当の本人はその視線にニッコリと爽やかな微笑みで返してくる。

前の紅葉の方が見た目も言うことも可愛かったのに!!と悪態を吐いたところで逆に貶されるのが目に見えたのでそれを口に出す事はやめた。
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