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短編集【果物籠】

第3章 そろえましょ【夾】


「事件です」

「「は?」」


屋上でランチタイムを迎えた時、私の言葉に春と紅葉はハテナを浮かべて声を揃える。


「ねぇ、ちょっと聞いてよー!変なんだってば!!」

「そうだね、ひまりはいつも変…。ではいただきます」

「どうしたのー?やっとキョーと別れるのー?」


面倒くさそうに軽く受け流す春と、嬉々とした表情で問うてくる紅葉。
そんな2人を睨みつけながら「違う!!ちゃんと聞いて!」と声を荒げてもその態度は全く変わらなかった。


「ここ最近、夾が変なんだよー…連絡全然取れないし、電話も全然してないの…」

「忙しいんじゃない?あ、今日の唐揚げ絶品…」

「きっとウワキだねっ!別れろー!振られろー!爆ぜろー!」


コイツ等…と持っていたお箸を折る勢いで握りしめるが、やはり彼等の態度は変わらない。
相談相手を間違えた…と項垂れながらここ最近の夾に対する不信感を思い返してみる。


最後に長電話をしたのが約半月前。

それから段々と日々の連絡が返ってこなくなり、電話にも出てくれない。
次の日の朝に『悪い、寝てた』って来るだけ。
最初は本当に忙しくて疲れてるんだろうなぁと思ってたけど、ここ最近は丸1日…いや2日ほど全く連絡が返ってこないこともザラ。

付き合ってからこんなこと1度も無かった。

どんなに疲れてても『おやすみ』ってメッセージは絶対に送ってくれていたのに…マンネリか?
これが世に言うマンネリってやつ?

ってマンネリなるほど会ってもないやないかーい!!!


「ねぇハルー!ひまりがブッコワレてるよー?」

「大丈夫。いつものこと」


ってことは…もしかしてもしかすると……

紅葉の言う通り浮気説濃厚…!?


「どうしよう!本当に浮気かも!!!」

「ないない。夾がそんなに器用な訳ない」

「わかんないよー?キョーもオトコだからねー。マガサシタってやつじゃない?」

「ああぁぁあ……」


紅葉の言葉に瀕死状態になる私。
頭を過ぎるのは最悪な事ばかりで…。


「紅葉、いじめすぎ」

「えー?ひまりを泣かすような事があればボクがヒョイって連れてっちゃうからねってキョーには言ってあるもーん」


なんていう2人の会話は耳には届かなかった。
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