第2章 ゴア王国
期待に胸をふくらませて降りた先は、悪臭漂う夜のスラム街だった。人々は寝静まっているのか、起きている窓はなく、音という音は絶え果てていた。
『え...ここ何処?寒っ!なんでこんな真っ暗なの...』
ニーナがいた日本は、夏真っ只中だったため、薄着のままこの世界に来てしまったのだ。
そして、ここに来る前に自分が言った言葉を思い出す。
”モンキー・D・ルフィが5歳になった日”
『確かに、ああ言ったけど...なにも、真夜中に飛ばさなくなっていいじゃない。』
5歳になった日となれば、必然的に今は5月5日の0時だと考えて間違いなさそうだ。
取り敢えず、この先どうするか...と考えていた矢先、遠くの方で静かな夜には似つかない、甲高い女性の悲鳴が聞こえてきた。
『っ...なに?』
音を立てぬよう静かにその場へ歩み寄ると、
なにやら、人相の悪い男たちが群がっていた。
騒ぎの中心を見てみると、店先で男たちのボスらしき男に酷く痛めつけられている少年の姿があった。
一刻も早く止めさせなければと思い、咄嗟に叫ぶ。
『警備隊の方々、こっちです!早く来てください!!』
当然誰もくるはずは無いのだが、上手く騙されてくれれば穏便に済む。
ニーナの願いが届いたのか、血相を変えた男たちは「次は無いからな!」と少年に言い残し、逃げるように去っていった。
ニーナはその様子を視界に捉え、ほっと胸を撫で下ろすと急いで少年のもとへ駆け寄る。
『大丈夫!?君、意識はある?』
そう言いながら、少年を抱き抱えようと体をこちら側へ向けた時、ニーナは思わず息を呑んだ。