第1章 神と名乗る者
外見を変えることが出来ると知ったニーナは、さっそく取り掛かることした。
少し待ってて!
そう言い残してから数分後、突如眩い光がニーナを覆い隠した。そして、そこから現れたのは、先程までの少女とは全くの別人だった。
雪のように白い肌に血のように艶やかな唇、柔らかなブロンドの髪から覗く琥珀色の瞳...
「上手く化けたな。」
そう言われ、ニーナはニコッと笑う。
一見大人びた顔をしているが、笑ったその顔にはまだ18歳の幼さが残っていた。
『これでもう大丈夫。何時でも行けるよ!』
「そうか...では最後に、どの時代に降り立つか決めてくれ。」
今後の命運を大きく左右するため、ニーナは慎重に考え、答えを出した。
『モンキー・D・ルフィが5歳になった日...って言っても分かるかな。』
「あぁ、問題ない。では飛ばすぞ。」
『あ!!まって、最後にあなたの名前を聞いてなかった。アレスにも名前があるんだから、当然あなたにもあるんでしょ?』
少し黙り込んだ後、目の前の人物はどこか寂しそうな面持ちで呟いた。
「月読...私の名前は月読命(つくよみのみこと)だ。」
聞き覚えのある名前にニーナは驚く。
『月読命って、あのツクヨミだよね...確か天照大御神様の弟君だって...』
「そんなことよりお前、下を見ろ。あと数秒後には向こうに飛ばされるぞ。」
そう言われ、下を見てみると、既に膝下までが消えかかっていた。
『じゃ、じゃあ月読...さん。行ってきます!上手くいくよう祈ってて!!』
「あぁ、気をつけて行ってこい。」
眩い光が視界を覆う寸前に見えた彼の表情は、とても暖かな微笑みで満ちていた。