第2章 ゴア王国
暫くして、2人は中心街から端町に出た。
『はぁ...はぁ...ここまで来れば、彼らも追っては来れないはず...』
ここ最近まで、”受験生”をしていたニーナにとって、久しぶりの疾走に息が上がっていた。
それに対しエースは、ほんの少し息は乱れているものの平然とした様子だった。
しかし、その顔は不思議そうにこちらを見上げていた。
「なぁ、これ...」
『ん?』
辺りをキョロキョロしながら言うエースに、一緒になって見渡すと、時間が止まったままだということに気づく。
『あっ、走るのに夢中で忘れてた!!』
慌てて、最初の時のように目を閉じ、意識を集中させる。
動け...
ニーナが再び目を開けると、世界にもう一度時間が流れ始めた。
徐々にこの能力の扱いが分かってき、今度はスムーズに出来たことに安堵していると、背後から息を呑む音が聞こえてきた。
「さっきのも今のも、全部お前がやったのか...?」
目をまん丸とさせて聞いてくるエースに癒されながら、ニーナは近くに置かれた長椅子に座り、隣に座るよう椅子をポンポンと軽く叩いた。
それからニーナは、エースに自分の能力について分かりやすく、丁寧に説明した。
但し、自分の素性などに触れるものは除いて...
「そうか...大体は分かった。世界には、まだまだ俺が知らねェことが山ほどあるんだな。...俺さ、いつか必ず海へ出て、この世の全てを自分の目で見てみたいんだ。」
目をキラキラと輝かせ、夢を語るエースの姿は、希望に満ちた年相応の男の子そのものだった。
その様子をニーナは、我が子を見守る母親のような暖かい目で見つめていた。
『君なら絶対出来るよ。』
予想もしなかった言葉を掛けられ、顔を上げると、穏やかな笑顔がエースに向けられていた。
なんだか恥ずかしくなったエースは、顔を背け咄嗟に話を変える。
「そっ、そういやお前.....聞かないのか。」
『...?』