第2章 ゴア王国
日が沈み初め、ぼちぼち帰り支度を始める屋台が出てきた。
最初の方は遠慮がちだったエースも
途中からは、何が欲しいかはっきり言うようになった。
お腹が満たされてきたところで
急に尿意を催したエースは
「ちょっと行ってくる...すぐ戻って来るから、ここに居ろ。」
そう言い残し、小走りでどこかへ去っていった。
次にエースが帰ってきたら、そのままお別れか...
エースが去っていった方向を見つめながら
そんなことを考えていると、
後ろから複数の足音が聞こえてきた。
「あれー、お姉さん今一人?暇してんなら俺らと遊ばね?」
振り返ると、そこにはいつぞやのチンピラ共がニヤリと不気味な笑みをして立っていた。
「うわっ...よく見るとすっげェ美人じゃん。これならいくらヤッても飽きねェだろうなァ...」
舐め回すようにニーナを見やると、懐から何やらキラリと光るものを取り出す。
「大人しく着いてくれば痛いようにはしねェから。」
そう言うと、じわじわと距離を詰めてくる。
しかし、そんな状況でニーナが考えていることは
”どうやってこの場から逃げ出すか”
ではなく、
”どうやってエースと会わせないようにするか”
だった。
先程からこの光景を見て見ぬふりをしている通行人の様子を見るに、彼らの街での暴れようは一目瞭然。
もしエースと彼らが鉢合わせれば、彼らは昨晩の続きをと暴れだすはずだ。それはエースにも言えるだろう。
何とかして止めなければ...そう考えを巡らせていると、
「聞いてんのか!」
自分達には目もくれず、一人で黙々と考え事をしている様子に苛立ったのか、ニーナの腕を強く掴み、引き寄せた。
と、その時ーー
「その汚い手を放せ。」
低く怒りの篭った声が背後から聞こえ
振り返ると、そこには険悪の形相を帯びたエースが立っていた。