第2章 ゴア王国
人の温もりに慣れていないエースは、思わず繋がれた手をほどいてしまう。
「っ...いきなりなんだよ!」
突然のことに驚くニーナだったが、
宙をさまよう行き場の無くなった手と、眉を寄せてこちらを見るエースを見て、
自分は拒絶されたのだと察した。
『ご、ごめん...はぐれちゃうといけないと思って...』
会ったばかりの人間にいきなり手を繋がれれば、誰だってそんな反応を取るだろう。
頭では理解しているが、心がついていかず、
徐々にニーナの顔が悲愴な面持ちへと変わっていく。
そんなニーナを見て、エースはどうすればいいのか分からずおろおろするが、
少し考えると
「っわ、分かった...!これでいいか!?」
そう言い、自分の何倍もあるNAME1#の手を先程された様に優しく握った。
突如感じた温もりに、そちらへ目を向けると
顔を少し火照らせたエースが自分の左手を握っていた。
気をつかってくれていると分かってはいるが、その気持ちがただ嬉しくて、
『ありがとう。』
あたりがふんわりと明るくなるような、眩しいほどの笑みをエースに向けて、そう言った。
瞬間、エースの中で何かが大きく揺れた。
同時に顔が首の付け根まで朱を注いだように真っ赤に変わる。
なんだ、これ...
エースは今まで感じたことの無い気持ちと、加速していく胸の鼓動に戸惑いを隠せないでいた。
『えっ、顔が真っ赤だよ?もしかして熱があるんじゃ...』
熱を測るためにエースの額に手を近づけると、咄嗟に顔を背けられる。
「っだ、大丈夫だから...早く行こう。」
そのまま手をぐいっと引き、人混みの中を歩き出す。
挙動不審なエースを不思議に思いながらも、左手に伝わる体温の心地良さに、ニーナはここに来て初めて安らぎを感じていた。