第2章 ゴア王国
睫毛を震わせ、瞼が次第に開かれていく様子を、エースは息を呑んで眺める。
瞬間、エースの目が大きく開かれた。
それもそのはず、その眼は人間の珍重する琥珀というものよりも遥かに美しく輝いていたのだ。
『あ、起きてたんだ...大丈夫?痛いところとかない?』
まだ覚醒しきれていないためか、とろんとした目でこちらを見上げる。
「いや、別にねェけど...」
あまりに美しいその瞳に見惚れていると、はっと我に返る。
そして、先程感じた疑問を思い出す。
「お前、俺に何かしたか?昨日あった傷がすっかり消えて無くなってるんだ。」
ほら...と、自分の手をこちらへ差し出して言うエースに、ニーナはどう説明しようかと頭を悩ませる。
『ざっくり説明すると...チンピラを追い払った後、君をここまで連れてきて傷を治療したって感じかな。』
えへへと呑気に笑いながら言うニーナに、エースはしばし言葉を失い、口を軽く開いたまま、ただぼんやりと眺めていた。
「は?何言ってんだ。女が一人でそんなこと出来るわけねェだろ。」
『んー、普通はそうだろうね。でも、もし私が能力者だったら...?』
艶やかに微笑むニーナに、何かを悟ったエースはひどく狼狽する。
「お前、悪魔の実の能力者なのか!?」
『いや、悪魔の実は食べてないよ。この能力は元々私が持ってる力なの。』
”元々”では無いが、一から説明するとややこしくなってしまうため、ここは簡略にまとめる。
「元々...んなもん今まで聞いたことねェ。世界にはそんなやつが居るんだな。」
期待や困惑など、色々な感情が入り混じったような表情で呟くエースに、
苦笑いを浮かべながら頷く。
『ところで、昨日はなんであんな所に居たの?』
過去を知るニーナには容易に想像できることだが、確認のため聞いてみる。
すると、たちまちエースの顔が曇り始めた。