第2章 ゴア王国
夢から覚めると、右手に違和感を覚えた。
すぐさまそちらへ目を向けると、エースの目がギョッと開かれた。
視界の先には、すぐ横で椅子に座り、ベッドに突っ伏したままの女の姿があった。
右手はしっかりエースの手を握っている。
「誰だ...こいつ。それに、一体ここは何処だ?」
エースはまだ覚醒しきれていない脳を無理矢理起こし、昨晩の記憶を呼び起こす。
そういや、俺...チンピラ共に散々蹴られて...
そこでふと、昨晩つけられた傷や、痣が無くなっていることに気づく。
「一体、俺が気を失った後に何が起きたんだ。」
状況から考えて、今横でぐっすり寝ている女が、自身を此処へ連れてきた張本人なのだろう。
それにしても...
「すっげェ美人...」
思わず漏らした声に自分で驚く。
窓から差し込む朝日に照らされ、長く黒い睫毛が、その目元に幽かな影を落としている。それは女の透き通るような白い肌をより一層引き立てていた。
目覚めたその眼には、一体何色の光を灯しているのだろう。
たった今初めて会った人間に、これほどまでに興味を持ったことなど今まであっただろうか。
そんなことを考えていると、横から微かに声が聞こえてきた。