第1章 育った場所
『うーんっと...呼吸って何ですか?』
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「とにかく集中して、自分の全身の筋肉を意識して息をするんだ!そうすると力が湧いてくる!」
『........えっと...』
炭次郎くんはどうやら直感で喋るタイプな気がする。まったくわからなかった。
その後、鱗滝さんから呼吸について詳しく教わり、鍛錬を始めた。
わたしはどうやら、思っていた以上に体力があるみたいで炭次郎くんはびっくりしていた。
なのに、
『どうやっても...出来ない。』
半年間必死で鍛錬して、炭次郎くんと一緒に鍛え上げたにも関わらず、鱗滝さんが教えてくださる水の呼吸がどうやらうまく使えないみたいだ。
「呼吸には、様々な種類があり、それもまた派生して新しい呼吸が生まれることがある。、他の育手を紹介しよう。様々な呼吸を学び、自分に合った呼吸を身につけるんだ。」
鱗滝さんは呼吸使えるようにならないわたしにも優しかった。
呼吸は水の呼吸だけではないからと他の育手まで紹介してくださった。
何でわたしは出来ないのかな。
思い出せば禿の頃からそうだ。
頑張ってもうまく行かない。
三味線、琴、舞 すべて下手くそ。
女将さんは呆れていたし、他の禿からは馬鹿にされていた。
でも、ねぇさんだけは優しかった。
「あんたには、もっともっと特別な才能があるよ。客はすぐあんたにハマるよ。でもね覚えときな、あんたは絶対に身請けだけは無理だよ?あたしとずっと一緒にいよう?妹だからね」
懐かしい。ねぇさんは本当にわたしを喰う気だったのかな。
また、会えるのかな。
鱗滝さんの家で過ごす最後の夜。月を見ながら昔を思い出していた。