第1章 育った場所
もうずいぶん遠くまできたなぁ...
ねぇさん、わたしのこと探してるかな?
わたしなんか居なくなってもどうでもいいかな。
「ここだ、入れ」
また、ぼーっとしながら歩いていたからびっくりした。
『...何か居ますか?この家』
ねぇさんの気配に似ているが違う、もっと弱々しい。
「よく気づいた。この家には今、鬼の少女がいる。」
『おに...鬼か』
この気配は、鬼の気配なのか。
では、この鬼も人を喰らうのだろうか?
わたしは騙されたのだろうか?結局、鬼に喰われるのか?
「大丈夫だ、今は眠っている。そして、この鬼は人を喰わない」
考えていたことが顔に出ていただろうか?
わたしは、無表情だとよく言われるけれど...
『鱗滝さん!』
新しい声がした。
振り返れば、年齢はわたしと同じくらいだろうか男の子がいる。
『ん!?この子は?この子も呼吸を身につけにきたのですか?』
呼吸?なんだろう...呼吸って酸素を身体に取り入れるためのあれかな?そんなもの産まれた時からみんなできるよね?
なんか違うものかな?
『炭次郎!そうだ、今日からお前は兄弟子だからな。しっかり手本になるようにな』
『はい!鱗滝さん。』
炭次郎と呼ばれた男の子はなんだか嬉しそうに頷いた。
この子からは、すごく心地よい熱を感じる。
なんだろう、あったかい。
『竈門炭次郎です!よろしく!』
男の子がわたしの目をしっかり見て名乗ってくれた。
「 です。よろしくお願いします。」
『うん!よろしく』
男の子はわたしの手を握ってブンブン振りながら、もう一度よろしくと言った。