第1章 育った場所
それから数年の月日が経った。
わたしは13歳になり、女将は少し老けた。
ねぇさんは変わらない、たった数年だから変わらない人もいるだろう。
しかし、わたしは薄々気付いている。
ねぇさんこと蕨姫は人ではない。それが何なのかはまだわからない。
ねぇさんはとても情緒不安定な人だ。
でもわたしにはとびきり優しく、本当の姉のように接してくれる。得体の知れない何かではあるが嫌いではない。
「、ちょいとこちらに」
昼間にぼけっと考え事をしていたらいきなり呼ばれた。
何だろうか...
わたしを呼んだのは遊郭の旦那だ。
「お前気付いてるよな?その、蕨姫が...その
『ねぇさんが、人じゃないってことですか?』
「あぁ...あいつはな多分...鬼なんだ」
『鬼??』
「鬼はな人を喰らって生きる。お前もこのままじゃ喰われる。」
『そっか...』
正直よくわからなかった。喰うって?グツグツ煮たりするのかな?くらいの感覚だった。
「お前にこの店を救って欲しいんだ。この方についていけ」
『この方.....!?』
気づかなかった。気配がしなかったから。
その人はひょっとこの面をしていた。
鱗滝と名乗るその男に連れられ、その日のうちに店を出た。
ねぇさんとお別れできなかったが仕方ない。
死ぬのは嫌だ。助かりたかった。