第2章 旅立ちの章
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「オレさ、思ったんだけど…前世の記憶、薄れ始めてないか??」
レイの言った言葉。
「…は?……それってどういう…?」
意味がわからなかった。記憶が?薄れる??
「オレさ、今、自分が前世で女だったのは覚えてるけど、自分の名前も顔も覚えてないんだ…。」
そう言われて、ハッと気が付いた。
…私もだ。私も、自分の顔も名前も覚えてない…。
レイの、前の名前だって、覚えてないんだ。
「剣の太刀筋は、体が覚えてた。何十回、何千回と素振りしてたんだ…。体に染み付いていたんだろう。
…でも…両親の声も、前のカエデの顔も、兄弟が居たかどうかすらも…もう…覚えてないんだ…。」
レイはうつむいていて、今どんな顔をしているのかわからない。
…でもきっと、苦しい顔をしてるんだろう。そんな”気”が、する。
「このまま原作に入ったとして…オレ等がまだ原作の内容を覚えている保証はないんだ…」
…レイは、私も自分と同じ事になっていると、そう、確信してここに来たんだろう
…そ~言うところがいけ好かないんだ。なんでも分かってしまうところが。
「…レイ。気づかせてくれてありがとう。私、絶対に誰も入れないところを探してみる」
「…は?なんでだよ?」
「巻物に、覚えているこの世界のことすべてを書くの。未来の自分に向けて。そして、皆を助ける…!」
レイは暫くの間、ポカンとしてから、ふは、と笑いだした。
「ははは、そうか、そうか…精々、誰にも奪われないようにな!」
奪われたら一巻の終わりだから。そう言うレイの顔は、明るかったけど、
悲しい目をしていた……
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【主人公 メモ】
・前世の記憶、薄れているらしい
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