第18章 共に
カッと目を見開いて言った杏寿郎だったが、はた、と何かに気づいたように炭治郎の顔をマジマジと見下ろしてきた。
「少年、俺は相手が咲だと言ったかな?」
「あっ、いえ!でも、煉獄さんが咲のことを好きなのは気づいていましたから」
「なんと!」
天に向かって跳ねている前髪を大きく揺らし驚いた表情を見せる杏寿郎に、炭治郎はちょっと可笑しくなった。
あれでバレていなかったと本気で思っているのが可愛いと思ったのだ。
「少年!いかにも、俺は咲のことを長年想ってきた!!だが、なぜそれが分かった?」
「えっ、いやぁ、煉獄さんの態度を見ていれば分かると思うのですが…。俺の場合は匂いですね」
そう言って炭治郎は自身の鼻を指さす。
「咲といる時の煉獄さんからは、とても幸せそうな優しい匂いがしますから」
「…むう!さすがに面と向かって言われるのは恥ずかしいな!」
杏寿郎は頬を掻く。
「多分、気づいていたのは俺だけじゃないですよ」
にっこりと笑った炭治郎から悪意のないトドメを刺され、杏寿郎はさすがに照れた表情を見せた。
「自分では隠していたつもりだったんだがな。柱として不甲斐なし!!」
「まぁまぁ…。何はともあれ、本当におめでとうございます!俺も妹の結婚が決まったように嬉しいですよ。咲は本当に頑張り屋さんで良い子だから」
「うむ!そうだろう!!これ以上無いほど素晴らしい女性だ!」
そのあまりの勢いに、炭治郎は微笑ましさで少し笑う。
「……早く、下弦の弐を倒しましょうね!」
「うむ!そうだな!!」
腕組みをした杏寿郎は、その決意を示すかのようにムンと胸を張ったのだった。