第10章 産屋敷財閥に任せなさい
その日の夜、炭治郎達は縁側に集まって、杏寿郎が買ってくれたお菓子を皆で分け合って食べた。
霧雲杉の背負箱から出てきた禰豆子の小さな手には、色とりどりの金平糖が詰まった小瓶が握られていて、カラカラと可愛いらしい音を立てている。
杏寿郎が禰豆子に、と買ってくれたものだ。
「いいなー!俺も活動写真観に行きたかったな」
頭に包帯を巻いた善逸が、芋けんぴをポリポリと齧りながら言う。
「ボリ、活動、ボリ、写真ってなんだ、ボリボリ?美味い、ボリリ、のか?」
「食いながらしゃべんなよ!何言ってんのか分かんねーよ!うわっ、おかきのくず飛んできたし!」
「伊之助、口の中のものを飲み込んでからしゃべろうな。活動写真っていうのは、簡単に言うと劇のことだよ」
伊之助の口の周りについたおかきのクズを、まるで本物の兄のように甲斐甲斐しく布で拭いてやりながら炭治郎が笑う。
「怪我が治ったら、今度は親分も善逸さんも禰豆子ちゃんも、みんなで一緒に行きましょうね」
炭治郎の隣に座っていた咲が、陰からひょっこりと顔を出して笑う。
「おう!」
親分と呼ばれてすっかり嬉しくなった伊之助は、フンスと勢いよく鼻息を吐いた。