第10章 産屋敷財閥に任せなさい
杏寿郎は咲と炭治郎を蝶屋敷まで送り届けると、早々に任務へと戻っていった。
「杏寿郎さん、どうかお気をつけて」
「煉獄さん、今日は色々とご馳走になりありがとうございました。どうぞご武運を」
「うむ!二人もな!また会おう!」
笑顔で手を振りながら去っていく杏寿郎の姿を、道の向こうに見えなくなるまで見送ってから二人が屋敷内に入ると、ちょうど診察を終えたしのぶが部屋から出てきたところだった。
「あら、おかえりなさい咲、炭治郎くん。活動写真は楽しめましたか?」
「はい!すごく楽しかったです!蝶屋敷の子達にとお土産もいただきました!」
クリクリとした大きな瞳が四つ、無邪気に輝いているのを見てしのぶは「あらあら」と内心で苦笑した。
どうやら異分子・炭治郎を投入してみるという試みは、特に咲と杏寿郎の関係進展の起爆剤にはならなかったようだ。
二人の様子から推測するに、今日もいつも通りあくびが出るようなのどかさだったに違いない。
(でも、咲が楽しそうだから良しとしましょうか)
今頃は、この子らと同じように無邪気に笑っているのであろう杏寿郎の顔を思い浮かべて、しのぶはこっそりと微笑んだのだった。