第10章 産屋敷財閥に任せなさい
話題はいつの間にか家族の話へと移っていき、炭治郎は自身が六人きょうだいの長男であることを、杏寿郎は千寿郎のことを嬉しそうに話し始めた。
二人の楽しそうな口調に誘われるようにして、咲もまた、自身は三人兄妹の末っ子であり、両親と祖父、二人の兄と共に暮らしていたことを語ったのだった。
鬼に襲われ家族を失ってからしばらくの間は、家族のことを思い浮かべるだけでも胸が苦しくなり涙が止まらなかった咲だったが、煉獄家で穏やかな日々を過ごすうちにいつしか心の傷は少しずつ癒えていき、気づいたらこうして話せるようになっていた。
決して、家族を失った痛みがこの胸から消えた訳ではない。
だが、深く深く傷ついた胸にそっと手を当てて、溢れ出た血を拭ってくれる人達がたくさんいる。
杏寿郎や不死川、しのぶ、槇寿郎、千寿郎、炭治郎、カナヲ、アオイ……その他にも数え切れないほどたくさん。
何もかもを失い、絶望の底に沈んでいた自分の手を掴んで、たくさんの人が引っ張り上げてくれた。
その人達のおかげで自分は今もこうして生きていられるのだと、咲はいつも感謝しているのだった。