第10章 産屋敷財閥に任せなさい
「はい。私は……鬼に襲われているところを杏寿郎さんと不死川さんに救っていただいた後、しばらくの間煉獄家でお世話になっていたのです。その時杏寿郎さんに稽古をつけていただいたので、命の恩人であり師でもあります」
「へぇー!そうだったんだ!」
「結局剣士にはなれませんでしたが、隠になりたいと言った私のために、杏寿郎さんは親身になって尽力してくださいました。本当に素晴らしい方です」
昔のことを思い出し、少し涙ぐむ咲に、炭治郎の目にも思わず涙が浮かぶ。
そんな風にして二人が話しているところに、杏寿郎が早々と戻ってきた。
「咲、何もなかったか?」
両手に飲み物を持った杏寿郎にそう問われて、咲は先日の相撲観戦の時に変な輩に声をかけられたことを思い出す。
もしかしたら杏寿郎はそのことを心配して急いで戻ってきてくれたのかもしれないと思って、咲は嬉しくなる。
「はい!炭治郎さんが一緒にいてくださったので、大丈夫です!」
「そうか、それは良かった。竈門少年!ありがとう」
そう言って杏寿郎は、買ってきた飲み物を炭治郎に渡した。
それから咲の手にも飲み物を渡してくれる。
その太陽のような笑顔を見上げながら、
(本当に、優しい方だなぁ)
と、包み込まれるような幸せを咲は感じるのだった。