第10章 産屋敷財閥に任せなさい
耀哉から貰ったその券を入場口に立っている職員に見せて劇場内に入ると、ズラリと並んだ大量の客席と、正面には大きな白い壁が見えた。
「君達は先に座っているといい。俺は何か飲み物を買ってこよう」
そう言って羽織をひるがえしながら歩いていく杏寿郎の後ろ姿を見て、咲は先日相撲を見に行った時のことを思い出す。
「煉獄さん、優しいね」
ニコッと炭治郎に微笑まれて、咲も嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「はい。いつもこうやって細やかに気を配ってくださるんです」
「そうだね!煉獄さんって、すごく豪快で男らしいのに、こういう細かい気遣いもできるからすごいよね!」
炭治郎も嬉しそうに笑う。
「そうですね。昔からとてもお優しい方でした。何も言わなくてもさっと感じ取って、さりげなく手を貸してくださるような方なんです」
「やっぱり煉獄さんって素晴らしい方だなぁ。……あのさ、聞いてもいい?咲って煉獄さんとすごく仲が良いよね?」
炭治郎は、初めて咲と出会った時から気になっていた質問を思い切ってぶつけてみた。
あの時も杏寿郎は、まるで宝物でも扱うかのように咲に接していたからだ。