第10章 産屋敷財閥に任せなさい
産屋敷家が経営しているという劇場は、街の中でも一際凝った作りの洋風の建物で、様々な人でごった返していた。
劇場前に車で乗り付けてくるような紳士、淑女の姿も見受けられ、富裕層の人々にも人気の場であることがうかがえる。
「うわぁー、すごい建物だ。俺、こんなところ初めて来たよ。禰豆子も連れてきてやりたかったなぁ」
「ほんと…すごいですねぇ。建物全体がキラキラ光ってるみたい……」
炭治郎と咲は、その豪奢な内装に感心してポカンと口を開けている。
「うむ!これはすごい!」
二人よりも年かさの杏寿郎も、活動写真は観たことがあったがここまで凝った内装の劇場に来たのは初めてであるため、物珍しそうにキョロキョロと辺りを見ていた。
杏寿郎同様に辺りを見回していた咲の目にふと、入場券売り場に掲げてある料金の書かれた看板が入る。
そこに並んでいる数字を見て、咲は唖然とした。
「えっ!か、活動写真ってこんなに高いんですか!?」
ギョギョッと目を丸くする咲に、横に立った杏寿郎が言う。
「うむ!相場はもう少し安いと思うが、何せこの豪華さだ。あの料金でもおかしくはないだろう!」
「自分ではとても手が出ないです……」
咲は、にっこりと微笑みながら招待券を手渡してきた耀哉の「この券で何人でも入れるからね」という言葉を思い出し、さすがはお館様…太っ腹だ、と感心したのだった。