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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第10章  産屋敷財閥に任せなさい



杏寿郎は、その派手な見た目とハキハキとした物言いから、よく言えば男らしい、悪く言うと大雑把な性格のように捉えられがちだが、意外にも人の細かいところによく気がつく繊細な一面を持っている。

隊士達にも分け隔てなく親切にしてくれるし、その朗らかで精悍な笑顔には思わず「兄貴」と呼んでしまいたくなる魅力があった。

炭治郎もまた杏寿郎を慕っている一人であり、彼には何くれとなく世話を焼いてもらっているため感謝してもしきれないと常々思っている。

だから、杏寿郎の姿を見かければ必ず挨拶をしに行ったし、おそらく他の隊士達よりも杏寿郎との交流は多いはずだった。

だがこんな、まるで宝物を見つめるような幸福に満ちた表情は今までに見たことがなかった。

(うわぁ、煉獄さんから、ものすごく幸せそうな匂いがするぞ)

炭治郎にしか嗅ぎ取ることのできない匂いと、杏寿郎のその表情から、炭治郎はあることにピンと気がついた。

(煉獄さんってもしかして、咲のことが好きなのかな?)

そう思って炭治郎は、再度まじまじと杏寿郎の顔を見つめてみた。

普段は、その大きな瞳を目一杯に見開いて、快活で豪快だが何を考えているのか分からないような顔をしている杏寿郎が、まるで乙女のようにうっすらと頬を染めているではないか。

燃え盛る炎を閉じ込めたような大きな瞳に、今は桃色の灯りが点っているようにも見える。

(これは……匂いを嗅ぐまでもなかったな。なんだぁ、そうだったんだな!)

杏寿郎から香ってくる匂いは、とても幸せで嬉しそうで、ほんのりと甘酸っぱい。

その良い香りに包まれながら、炭治郎は「そうと分かれば、煉獄さんの恋を全力で応援するぞっ!」と、むん、と胸を膨らませる。

まだおのれの恋すら経験したことの無い炭治郎少年は、密かに胸の内でエイエイオー!と声を上げたのだった。

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