第8章 【番外】ある日ある時
普段は訓練をするための広場では、大勢の調査兵団の兵士達が集まっていた。
松葉杖をつきながら集まって来る者、座って語らう者、膝をついて涙を流す者。
彼らの中央では、小雨の中強く燃える大きな炎。
今日は、先日の調査で亡くなった者達を弔うための火が焚かれていた。壁外調査で殉職する人数は多いが、その多くは亡骸を持ち帰ることは出来ない。そのため最後の別れをしようと、こうして火を焚き故人の遺品を燃やして弔っている。
『雨が降ってても炎って燃えるんですね。』
「お前は何か持って来たのか?」
マリーは今回の調査で、唯一の血の繋がりを失ってしまった。
しかも、皆マリーの目の前で巨人に喰われて死んだ。
数日前までは引きこもり、誰の呼び掛けにも応えず食事も摂らなかったほど衰弱していたが今は落ち着き、元通りになったようにも見える。
『いいえ、なにも。だって団長、部屋に私物が何も無いんですもん。ほんと…仕事人間というか、結婚もせずに家族とか、自分自身とか、どうでもよかったんですかね。』
マリーは視線を炎に向けたまま言った。
表情はなく、そこからは何を考えているのか読み取れない。
「アイツは人類の平和と安寧にアイツの人生全てを捧げていた。」
調査兵団団長として、常に冷静に心を殺し、人類にとっての最善の選択をいくとどなく迫られ続けていた、
マリーは知らないだろうが、時には兵団の利益となるようならば貴族の女を己の体を使って利用し泣かせてきた。
だが、アイツはマリーを蔑ろにはしたことがない。
「壁外調査の前日、俺はエルヴィンとハンジと3人で飲んだ。」
少し突拍子も無かったか、ふふふとマリーが笑う。
『調査の日の朝、そういえばハンジさんも言ってましたね。』
「酒を飲みながら、主に壁外での立ち回りや陣形、作戦の流れについて話した。」
『お酒が入っても仕事の話するって、本当に皆さん仕事人間ですね』
「いや、確かに奴は主には仕事の話をしていだか、1度だけ別の話をした。」
そう言うと、ようやくマリーの顔がこちらを向いた。
炎からはバチバチとものが燃える音が聞こえている。
小雨とはいえ、マリーの髪が見てわかるほど湿っている。