第1章 嘆きの声
「このことは2人だけの秘密だよ」
父さんが言ったその瞬間、私の耳の奥で誰かのすすり泣く声が聞こえた。
「父さん、何かが私を呼んでる」
そういった私を、父さんは更に強く抱きしめた。
父さんの体は震えてた。
それでも耳の奥でずっと誰かが泣いている。
「その声に耳を貸せば、お前はもう戻っては来れない」
父さんの声が、泣き声より強くなった。
戻っては来れない、という意味がよくわからなかった。
ただ、幼い私には父さんが悲しんでいるということだけが胸にぎゅーっと染み込んだ。
だから私はその声に答えない。
答えちゃいけない。
…答えられない。