第3章 彼女と彼ら
―――結局、右目の話は聞けなかった。
ラビはメリッサの発言に暫く沈黙したあと、「俺は何も聞いてねぇ。知らねぇさ」とだけ呟き、見て回るなら修練場がおすすめだ、と教えてくれた。
ゆっくり修練場を見て回りながら、とても驚いたような顔をしていたラビのことを思い出す。
メリッサはラビの髪を褒めたつもりだったが、もしかして気に入らなかったのかもしれない。
メリッサにとってクロス・マリアンは敬愛するべき人間の1人である。
クロスはメリッサが幼い頃から、よく彼女の家を訪れていた。そのため、メリッサはアレンのことを知っていた。
よく食べること、髪の毛が白いこと、自分の愛する人を殺してしまったこと、その当時はマザーの家で心身共に療養中で、今はもうほぼ回復していること、そして彼自身のこと、彼以外のこと。
過酷な運命を持つ少年の話にメリッサはいつも引き込まれていた。アレン・ウォーカーがどうなってしまうのか、私がもし傍にいたら何をしてあげたいか。彼についていつもクロスと話をしていた。
そしてクロスは帰る時に必ず、
「今の話は2人だけの秘密だ」
といってメリッサの頭を優しく撫でた。
あの話は全て秘密。
だから私はアレンのことを何も知らないフリをする。
「メリッサ!こんなところにいたんですね!もしよかったら皆でポーカーをしませんか?」
少し遠いところで手を振るアレンが見え、メリッサは思わず笑った。
「今行く」