第3章 彼女と彼ら
いつもはガヤガヤとうるさい食堂だが、今日は誰ひとりとして喋らない。それどころか、全員がある“光景”をじいっと見つめているのだ。
「…珍しいさね、ユウが誰かと飯食ってるなんて…」
とてもとても小さい声だが、ラビの周りにいたリナリーとアレンはこくこく頷いた。
彼らの目線の先には、一緒に食事を摂っている神田ユウとメリッサ・ワグナー。
エクソシスト、ファインダー、科学班…その他もろもろの団員全てが、その異様すぎる2人を観察している。
神田は蕎麦を、メリッサはコーニッシュパスティーを黙々と食べている。2人の間に会話はない。
「リナリーはなんでこんな事になってるのか知ってんのか…?俺らにゃさっぱりさ…」
「…神田とメリッサが同時に座ってね…お互い気にせずそのまま食べ始めちゃって…」
「あの…」
ついに声をかけたメリッサに、全員がごくん、と唾を飲み込む。
「……その灰色のスパゲティはなんですか…?」
予想外すぎるメリッサの言葉に、神田含め全員の動きが止まる。
「……蕎麦だ」
「………ソバとはどこの国の食べ物ですか?」
「…知るか」
「……ソバ…そんな色の食べ物は初めて見ました…鼠色…といえばいいのでしょうか…」
「蕎麦を鼠と一緒にするな」
「それはそのスープにつけるのですか?」
「スープじゃねえ。ダシだ」
「…ダシ…?紅茶のような色をしていますが…」
「か、会話が成立している…!」
おお、と静かに歓声があがる中、アレンが小さく呟く。
「メリッサは…すごい女性ですね…」