第2章 黒の教団へ
メリッサ・ワグナー。
19歳。英国人。
母のデイジー・ワグナーは彼女が9歳の頃病死。
父のリチャード・ワグナーは教団にて事故死。
メリッサ・ワグナーいわく彼女が6歳の頃家を出たらしい。
先程コムイがメリッサから直接聞いた情報の一部である。メリッサは淡々と話すだけで、自分の父の死については何も聞かなかった。
「…いや、それより」
気になっているのはリチャード・ワグナーの事だ。
メリッサがイノセンスに適合した日、恐らく彼は一時帰宅をしていたのだろう。
そして自分の娘がエクソシストだということを知り、彼女が教団へ行かないようイノセンスを隠した。
―――しかし何故だ?
彼女をエクソシストとして目覚めさせたくなかったのなら、何故イノセンスを武器化したのか。
リチャード・ワグナーがメリッサを教団へ連れて行かせたくなかった理由は分かる。
その頃の教団は、非適合者の実験を毎日のように繰り返し、適合者は教団へ幽閉する監獄だった。
教団の科学班だった彼には、教団がどういうものなのか痛いほど分かっていたはずだ。
恐らく自分の可愛い娘をそんな地獄へ送り込みたくなかったのだろう。
ワグナー家はクロス・マリアンとも親交があった。
イノセンスを武器化したのは元帥なのだろうか?
「…アレン君と同じように謎が多いね、彼女は」
自嘲するように呟かれた言葉は、誰の耳にも届かないまま消えていった。