第1章 嘆きの声
無我夢中で金色の光を追っていると、いつの間にか小さな部屋に辿り着いていた。
薄暗いその場所で、ひとつだけ光っているものがある。
「…イノ…センス…?」
それは、私が昔見た石ではない。
美しい鎌の形状をしていた。
そしてその鎌から、すすり泣く声が聞こえる。
―――イノセンスは私を欲してる。
だけど…
「ねえティム、私はどうすればいい?」
ティムはもちろん答えない。ただ鎌の周りをパタパタ飛んでいるだけだ。
「私に力をくれるはずのイノセンスなのに、何故か体が震えるの」
立っていられないぐらいに体が震える。
父さんの言葉が、頭の中でぐるぐる巡る。
―――お前はもう戻って来れない。
「それは教団のこと…?それとも…」
突然、ジジッとノイズが聞こえた。
ティムからだ。誰かからの通信らしい。
「――あー聞こえるか?メリッサ、俺だ。よく聞け」
「その…こえ、は」
一気に震えが消えて、体の全てがその声を聞くために動き出す。
「エクソシストにならねぇならそれでいい。お前の親父はお前を教団から守るためにそいつを隠したぐらいだからな」
「おじ様…!今何処に…」
「黙って聞いてろ。…だがな、イノセンスは適合者を求めていつまでも彷徨う。今はそいつから逃げられても、いつか受け入れる日が来る」
「…おじ…様…。なら私はどうすればいいの?」
「メリッサ、立ち止まるな、歩き続けろ」
―――ぷつり、と音が止まり、また静寂が部屋を包んだ。
いつかイノセンスは私を捕まえる。
逃げる事は出来ない。
それなら、
「…もういいわ。一生物の付き合いって…ことよね…」
ごめんね、父さん。
イノセンスの光が、私を包んだ。