第1章 嘆きの声
「この屋敷広すぎさ!!」
ラビは屋敷の簡単な地図を片手に叫んだ。
申し訳なさそうにメリッサが僕にも地図を渡す。
「一階、二階。それから…地下室があるそうです。私も母も、一度も行ったことがないので…どこに入口があるのか分からなくて」
「床をぶっ壊すわけにもいかねーしなあ」
「当たり前です!」
「でも一番怪しいのは地下室です。私が入口を探すので二人は他をお願いします」
分かりました、と答えようとした時、
―――左目が、疼いた。
アクマを探そうとしたが、その必要はなくなった。
アクマの砲弾が近くで聞こえたのである。
「アクマさ!?」
「多分イノセンスが狙いです!」
どうする?!
メリッサを置いて応戦するわけにもいかない。
そもそも、イノセンスすら見つかっていないのに…!
「私は大丈夫です!イノセンスを必ず見つけます!だから2人は行ってください!村の人を――」
また爆発。更に距離が近くなっている。
「でも、でもそれじゃメリッサが!」
「そうさ!武器も持ってねぇ奴を1人にはできねぇ!」
僕らの言葉を聞いて、メリッサは微笑んで見せた。
2回目の笑顔は、なんだか悲しそうだった。
「大丈夫。イノセンスが私を呼んでるなら、きっと応えられるから」
――また爆発。
もう時間はない。
「…お願いします!メリッサ!」
「無茶はすんなよ!」
ええ、とメリッサは頷いたあと、
「いってらっしゃい」
と手を振った。
その姿がリナリーと被る。
リナリーの元気で頼もしいものとは全く違う、「いってらっしゃい」の言葉。
それは儚い夏の夜の夢の妖精みたいだった。