第1章 ー東堂尽八の場合ー
「ハッ、ん…ふ」
「はぁ…たまらんな。玲香の声は美しくて可憐で、酔ってしまいそうだ…」
「も、何回…言うの…っ…」
「何回でも言うぞ?本当のことだからな。そのとろんとした瞳もたまらんな。何もかもが愛おしい」
尽八の言葉ひとつも甘美な刺激となって私の体を震わせる。体の奥が熱くなるのを感じて慌てて尽八から視線をそらす。
暫く私の髪を撫でていた尽八が動いたと思うとひょいっと体が浮いた。
「ちょ、尽八何してッ…」
「お姫様抱っこに決まっているだろう?ここでは狭すぎるからな。何だ、玲香はここでシたいのか?」
「…シないって選択肢は」
「あるわけがなかろう。こんな甘い声を聞かされて、我慢出来ると思うのか?」
覚悟しておくのだな、とニヤリと笑った尽八は軽々と私を抱きかかえ、そのまま立ち上がり寝室へと歩き出す。
いつもはキリッとしている目元を見上げれば瞳がギラギラと熱を帯びていて。またキュンと体の奥が疼き出す。
トサッとダブルベッドに優しく降ろされれば、尽八の香りに包まれてそれだけで頭がクラクラする。
「玲香…必ず…必ず幸せにする。オレの人生全てを賭けて…愛しているぞ」
「尽八…っ、私も愛してッ…ん!」
普段からは想像出来ない程、真剣な瞳に射抜かれて動けない。ベッドに縫い付けるように尽八の長い指が私の指に絡まれば、私の愛の言葉は尽八の唇に吸い込まれた。
「んんッ…は、ぁ…んむ、ふっ…」
尽八の舌先が滑り込んでくると私の舌を絡め取る。それは甘い刺激となって私の体を掛け巡る。当然、それだけで終わるはずもなくねっとりと味わうかのように口内で蠢く舌に更に鼓動は速くなり、呼吸も乱れる。
今だって十分幸せだって伝えたいのに、尽八の乱れる呼吸が、香りが、小さく漏れる声が、その全てが私の思考能力を奪っていく。
絡ませていた指が離れ、指先が髪を滑り頬を滑り首筋まできたところでピタリと止まる。
「ふ、んぁっ…ハァ…じ、ぱち…?」
唇がそっと離れるとお互いの唇を繋ぐ糸が厭らしく光り、その光景に再び体の奥が熱くなるの感じ彼を見上げると、視線が絡み合い尽八から目が離せなくなる。
彼の乱れた呼吸と、普段とは違う余裕のない表情に思わずドキッとする。