第4章 ー荒北靖友の場合ー
「オレの目の前で抱き合ってンじゃねェ!」
「ヒュウ!靖友ヤキモチかい?」
「っせ!!ほらとっとと帰りやがれ!」
「わかったわかった…じゃあ悠人、行こうか」
「今日はありがとう!またね隼人くん、悠人!」
シッシッ!と追い払うように手を振った靖くんに肩を竦めた隼人くんは、私達のやり取りを楽しそうに見てた悠人を連れて帰っていった。
二人を見送りに玄関まで行って手を振りドアが閉まると、再び後ろから抱き締められてドキッとする。
「…靖くん?その、隼人くんと悠人が従兄弟だって黙ってたの怒ってる…?」
「あ?別に…それよりも、だ!」
「へ?うわわっ!」
抱き締めていた腕の力が緩んで両肩に手を置かれたと思ったらそのままぐるんと回されて、思い切り腕を引っ張られるとバランスを崩して倒れ込むように靖くんの胸に飛び込む。
そんな私をしっかりと抱き締めてくれた靖くんを盗み見ればどこか不機嫌そうな顔のままで。
「オレ以外の男に抱き付いてンじゃねーよ」
首筋に顔を埋めてきた靖くんがポツリと溢した言葉に思わずニヤける。
今まで私が何してようと興味ないです、みたいな態度とってたのに…
ふふって小さく笑ってしまえばガバッと顔を上げた靖くんの眉間には大きな皺が。
「おめーさァ…」
「ごめんごめん!嬉しくって!靖くんもヤキモチ妬いてくれるんだなあって思ったらさ!もうやらない…抱きつくのは靖くんだけにする。約束」
暴言の雨が降り注ぐ前に思い切り靖くんに抱き付いてから顔を見上げてにこりとすると、深い溜め息の後にくしゃりと乱暴に頭を撫でられて。
「ったりめぇだ…もうおめーはオレんのだ。誰にも渡すかヨ。刻み込んでやるよ…オレのシルシ」
「っん…!ふ、う…ン」
真剣な瞳で見つめられると靖くんから目がそらせなくなる。顎に手をかけられ、ニヤリと笑った靖くんの顔が近付いてくると少し乱暴に唇を奪われる。
抱き締められている腕に力が入ると身動きが取れなくて、角度を変えてどんどん深くなる口付けに息を継ぐのに精一杯になる。
「ほら、ちゃんと舌出せ…」
「ッ、んん…ずるい、靖く…っふぁ」
「ハッ…お利口チャン」
掠れた低音の靖くんの声が甘い痺れとなって全身を掛け巡る。
おずおずと舌を出せば満足そうに笑った靖くんの舌に絡め取られ、たちまち快感に支配されて体に力が入らなくなる。