第3章 響く音はひろがりとどく
長い沈黙のあと、石田さんは口を開いた。
「たしかに、謝罪は望んでない。でも………僕だって君には嫌な思いや失礼な事をしたと思ってる。
いろいろ言われて、僕も気付いたよ。
君自身をちゃんと………見てはいなかったことに。
それは、どんな理由があっても人としてやってはいけないと…思う。」
「ただ………あの事はなかなか折り合いがつかない、難しい問題なんだ。
感情のままにぶつけて、告げるつもりもない事を言って傷付くのは、君だ。そう………思ってたんだけど。
いや、実際傷つけてしまってるんだと思う。
でもどうやら、いちばん傷付きたくなかったのは僕自身だったみたいだ。」
石田さんの瞳は、揺れている。
迷っている色が伺えた。
「………わからないんだ。
君に、関わるつもりもないと言っておきながら、助けた事。
闘ってる君の存在を感じて、やられてる君をただ、見ていたんだ。
でも、君が虚の攻撃を交わせないと分かったとき………身体が勝手に動いていた。
僕は矛盾だらけだ。
だから君の怪我の原因も酷いことを言ったのも含めて、謝罪をするなら………僕からさ。」
彼の思いはぽつりぽつりと、語られた。
当たり前だが、石田さんがそんな風に考えていたなんて思わなかった。
知らないって………なんだか、寂しい事かもしれない。
知らなければそのままで、わかり合う事すら出来ないのだから。