第3章 響く音はひろがりとどく
きゅっと拳を握って、私は緊張したけど口にする。
『弱くなんてないと思います。
もしそうなら、こんな風に話さないです。向き合って言葉にできる、石田さんは強い方です。
助けてくださった事も、理由はどうであれ、私は助かりました。千春ちゃんとの約束も叶いましたから。」
その事は、本当に感謝している。
石田さんが来てくれなかったら、最悪の結末だってあり得たわけだから。
「石田さんの気持ちは石田さんだけのものだし、大事な方の事で悩んで苦しんで、誰かに話したくなった時、聞いてほしい人に話せばいいと思います。
話す事自体、勇気も要りますから、大変ですが。
今はご自分の気持ちがわからないなら、それで………いいと思うんです。
焦ったり迷ったりした想いに、急いで答えを出しても、それはきっとその人の本心じゃないと思うんです。
本心だと思ってた、別のなにかなんだと思います。
だから焦らず向き合って、いつかはわかる日が来ればいいなって思います。
一人で無理なら、友を頼れと。
朽木副隊長に聞いたことがあります。」
「私はこっちに来て、日も浅い。
みなさんにある様な絆は私には無いから、
何かあっても一人でやろうと決めてたんです。」
私は、皆さんに自分から話しかけた事なんて殆どなくて。
初めて会った日のみなさんの姿を見て、チカラも互いの絆も強いとわかった。
でも同時に、絆の強さ故にそこには立ち入れないかもしれないとも思ってしまった。
だから、輪に入る事が出来なかった。
かわれたのは、誰がきっかけだったのか。
黒崎さん 井上さん 有沢さん
茶渡さん 千春ちゃん 石田さん
きっと 皆さんが そうなんだ
「でも、皆さん………優しいから。
声を掛けて、一緒にいてくれた。
だから、皆さんの事も
石田さんの事も、もっと知りたいです。
護廷十三隊の石津実穂として、仲間になるために。」
長々と…言ってしまった。
握り拳はじんわりと手汗があって、気持ち悪い。
言ってるそばから、何がなんだか分からなくて。でも、止まらなかった。
後悔はなくても、どんな言葉が返ってくるかと不安はあるがぐっと飲み込んで、息を吐く。
長い沈黙のあとに、石田さんはふっと笑ったんだ。
眉はゆるく弧を描いて、優しい顔で笑ったんだ。