第3章 響く音はひろがりとどく
「聞きたいこと、ですか」
出鼻を挫かれて、どうしようかと思っていたが石田さんの話を聞こうと決めた。
石田さんは自身の組んでいた指を見つめながら、どこか言いあぐねているような雰囲気がした。
それでも、すっと此方に顔を向けて口を開いた。
「どうしてあの時、僕を庇ったりなんかしたんだい?
僕は君がみた通り、滅却師だ。虚を倒す力はある。
………そんな事しなければ君は、余計に怪我なんて負わなかった筈だ。」
強い視線で、でも静かに彼は言った。
言葉の中に疑問の色が滲んでいる。
私は、石田さんから目を逸らさずに口を開いた。
「…わかりません。咄嗟だったし、身体が動いていたから。
でも………石田さんに力があっても無くても、私はそうしたと思います。
仕事だからとかじゃなくて………。目の前に危ない人がいたらやっぱり、助けたいって思うし、傷ついてほしくないです。だから………すいません、上手く言えません。」
そうだ。
庇った理由は、わからない。
彼に、傷ついてほしくなかった。
それはどちらも、まぎれもない私の本心だ。
私の言葉を聞いた彼はただ、黙っていた。
ふっと息を吐いて、そしてー。
「そう…か」と呟いた。
あんな答えでよかったのか、自信は無い。
でも、石田さんは納得してくれたようだった。