第3章 響く音はひろがりとどく
浦原商店の一室。
彼女が間借りしている部屋の中に、僕はいる。
あの後急いで戻ってきた僕らは、彼女の処置をしなければと浦原さんが動いてくれているのを見ていた。
みんなで彼女が目を覚ますまで待つことになったのだが………。
浦原さんに、彼女がどんな戦闘をして傷を負ったか聞かせてほしいと呼ばれた場所は、彼女の部屋だった。
女性の部屋に入るのは気が引けたが、掻い摘んで話したあと、浦原さんは造るものがあるからと部屋を出ていった。
もちろん僕も、あとに続くつもりだったんだ。
けど、「目を覚ました時に誰か居ないと、石津さんがビックリしちゃいますから」と浦原さんに居残りを言い渡された。
説明をしろと………そうゆう事だろうか。
困ったなと顔を掌で覆う。
立っていても仕方がないと、布団の近くに腰を落ち着けた。
簡素な部屋でも、格子窓の脇に一輪挿しがあって目を引く。
紅い小さな華だった。
名前はわからないが、綺麗だなと思う。
すっと、華から彼女に視線をむければ、ただ静かに眠っていた。
井上さんと自分で直した怪我は塞がっているし、酷かった右目も元に戻っている様だった。
浦原さんが処置した薬も効いているのかもしれない。
ふと…思う。
戦闘時を除いてこうして彼女と二人で過ごすのは、あの雨の日以来なんだと。
『………君が、大事な友人と重なるんだ‼︎』
『だから、関わる気はないんだ………』
そう僕は叫んで、彼女はその場を去った。
ほんの昨日の出来事なのに、酷く前に起こったように感じる。
目を閉じて思い出すのは、虚から彼女を庇った時のこと。
どうして………と言葉にしていた彼女。
僕がそうしている事が、信じられないといった瞳の色だった。
僕だって、わからない。
手を出すつもりも、ましてや助けるつもりもなかったのに。
ただ、気になって。
彼女の霊圧の揺らぎや耳に届いた鈴の音で
嫌な予感がしたんだ。
そして、今にも倒れてしまうような彼女の姿を見たら、勝手に身体が動いていたんだ。
本当に……どうして
理由がわからなくて、自分に戸惑う。
伏せていた目をあげて溜息をつく。
そして彼女を見れば、此方に視線を向ける瞳とぶつかった。