第3章 響く音はひろがりとどく
目覚める感覚がして、ふっと瞳を開けた。
優しい橙色の光に包まれていた私は、その先にたくさんの顔をみた。
黒崎さん 井上さん 茶渡さん 千春ちゃん
みんな、此方を覗き込んでいた。
「お姉ちゃん!」
「良かった、石津さん!」
「千春ちゃん……みなさん…」
ぼんやりとしていた意識がゆっくりと戻ってきた。
「どっどうしたの?石津さん…」
「あ、いやあの…すいません。ちょっと混乱してて…」
たしか石田さんを虚から庇って、意識をとばしたのかな…。
かばっ‼︎と勢いよく起き上がったことで、橙色の光はすっと消えていく。
かわりに、小さな翼を持った存在がふわりと周りを飛んでいた。
どうやら、彼らが井上さんのチカラの一部のようだった。
「酷い怪我してたんだぜ、お前」
「もう………いいのか?」
黒崎さんや茶渡さんに声をかけられた私は、大丈夫ですと頷いた。
「でも、まだ怪我だって治療し終わってないんだよ。眼の怪我なんて特に酷いし………」
「それたげ汗まみれになってしてくださっただけで大丈夫です。後は、回道を使って治せますから。」
井上さんはいま、かなりの体力を消耗しているのだ。
体の表面上の傷までは治っていても、損傷した右目や霊圧までを元に戻すとなると、まだかなり時間がかかるだろう。
自分がした事で、迷惑はかけたくなかった。
「本当に大丈夫です。これ以上すれば今度は井上さんが辛くなってしまう。それは私が嫌なんです。」
私の言葉で悩んだ末に、ようやく井上さんは頷いてくれた。
「でも、何かあったらすぐに言ってね!」
握り拳を見せて、井上さんは言ってくれた。
礼を伝えた後、気になっていたことを私は質問した。
「あの……石田さんは…」
「浦原さんを呼びに行ってる。念のためだそうだ。」
茶渡さんの答えに私は、ただそうですかと告げるだけだった。
石田さんとは、どんな顔をして会えばいいかわからなかった。
いざ彼とちゃんと話そうと決めた心も、あんな闘い方をした手前、揺らぎつつあった。
難しい顔を、私はしていたんだと思う。
おずおずと隣に立った千春ちゃんは、意を決したような顔をしたかと思うと、すっと息を吸って………
「お姉ちゃんのバカ‼︎‼︎」
「ええっ!?なんで!!」
勢いよく、叱られた。