第3章 響く音はひろがりとどく
嵐が去った後のように、荒れた道路や砂が混じる風が晴れてくる。
虚を逃してしまった事を悔いていたが、苦しそうな彼女の息遣いでそちらをみた。
「ごほっ………っ‼︎」
「このままじゃまずい!」
吐血をした彼女を今はどうにかしないといけない。
出血量も多いし、息も更に上がっている。
彼女をおぶって走り出そうとした時、遠くから黒崎や井上さん、茶渡くんが走ってくるのがみえた。千春ちゃんもどうやら一緒のようだ。
「お姉ちゃん!」
「石田‼︎」
「背にしてるのは………石津か⁈」
「大変、早く治療しなくちゃ!」
井上さん以外は軽い傷を負っているが、誰が見ても一番の重傷者は背負っている彼女だった。
僕らの様子に、みんなは慌てていた。
「浦原さんのとこに行くか?」
「すぐそこの銀杏の樹の側なら、開けてるはずだ!だから…」
ダッと黒崎の言葉を遮って、僕は走って銀杏の樹を目指した。
背負った彼女の荒い息遣いを聞きながら、
とにかく早くそこにつけばと、そう思いながら。