第3章 響く音はひろがりとどく
銀嶺孤雀を楯のかわりにしようと急いで構えるより早く、動いたのは虚だった。
避けれないと思った時、僕の体はグン!っと後ろに引っ張られていた。
ズガンッ!‼︎
「………ガァ‼︎………」
「っ!!」
虚の仮面を貫いたのは、彼女の拳に握られた長い牙だった。
仮面のヒビ割れは大きいが、それでもまだ浅く、辛うじて虚は生きていた。
「くっ‼︎」
崩れる彼女の背中を受け止めているうちに
虚はいつの間にか再生していた尾で、僕らを吹き飛そうとしてきた。
彼女を庇いながらその一撃を避けている間に、虚は地面に潜りこもうとしている。
「待て‼︎」
咄嗟に銀筒を放って言霊を叫ぶ。
「大気の戦陣を杯に受けよ‼︎ 聖噬“ハイゼン"」
銀筒から三角錐の青い光が虚に向かって放たれたが、地面に姿を消す虚のほうが早かった。
煙が晴れるとそこに虚はおらず、激しい戦いの跡が残っているだけだった。