第3章 響く音はひろがりとどく
虚は白い仮面がついた頭が未だ地面に埋まっているが、尖った尾をしなやかな動きでくねらせ、叩き込もうと向かってきている。
片目では距離感が掴めない。
ならばと、瞬歩の勢いのまま真上に飛び上がり、空を背にして掲げた右手を振り下ろした。
「破道の三十一 赤火砲‼︎」
赤い火の玉が勢いよく、尾に向かって投下されていく。
バランスを崩しながらもなんとか着地したが、足から地面に倒れ伏した。
辺りを煙が舞い、視界は悪くなる。
動きのない虚に安堵していたが、ズズッと地を這う音に、目だけをそちらに向ける。
「………そん…な…」
うねうねと煙から這い出てくる虚の体と、硝子玉を尖らせたような尾が此方に向いている。
なんで動けるのか。
いくら虚でも、有り得ない。
ぐっと体に力を込めても、動くのはせいぜい右手くらいだ。
目の前まできた尾が振り下ろされる刹那ー
ガン‼︎と白い矢が、私の拳が当たる前に虚の体に撃ち込まれた。
首を捻れば、雪の結晶のような光の弓を構えた石田さんがみえた。
ボッ‼︎と弾けた尾は大量の血と共に地に降り注いだ。
「見てられないね。さっきよりボロボロじゃないか。」
「石…田さんっ、滅却師………だったんですか。」
携えている白い弓に目を向けながら、私は呟く。
「そうだよ。だから僕は此処に来たんだ。」
眼鏡を直しながら、石田さんはぶっきらぼうに答えた。
「と言うかっ…私に退治させて…くださいってい………のに…」
「言ったじゃないか、僕の好きにすると。」
ゆっくりと歩きながら此方に近づく石田さんに、倒れたままの私はあれ……と思う。
地面の下……気配が動いている。
まずい‼︎
ゴバァァ!と地を割って現れた白い仮面の虚に、石田さんは背後を取られた。
「なっ‼︎」
「石田さん‼︎‼︎」