第3章 響く音はひろがりとどく
凄い風が吹いて、苦しいくらいだった。
治った時に顔を上げれば、お姉ちゃんが目の前にいた。
手には潰れてしまったガーベラの花束。
「持っていてあげて。」
渡されたそれを、受け取りながらお姉ちゃんをみる。
待っていて 信じてと そう告げたお姉ちゃんと変わらないはず。なのに………。
瞳がすごく冷たかった。
何か言わなきゃと口を開こうとしたけど、その前にお姉ちゃんは消えてしまった。
怖かったわけじゃない
でも、さっきのお姉ちゃんは
いつもの優しいお姉ちゃんとは別人みたいだった。
受け取った花束を、ギュッと抱える。
お姉ちゃんが、いつもみたいに戻ってほしくて。
あの優しい笑顔が…みたくて。
「待ってるから………早く帰ってきてお姉ちゃん」
呟いて、すぐ近くにある花の香りに、はたと気付く。
貰ったのはお母さん達からの花束だけじゃない。
お姉ちゃんがくれたチューリップの花束もあるじゃないか。
どこにあるんだろう
怖かったけど、恐る恐る樹の影から覗きみれば
斬られた化け物の躰近くに、潰れて落ちているのがみえた。
大丈夫………走って戻ればすぐだ。
震える手をぎゅっと反対の手で押さえつけて耐える。
意を決して、私は走り出した。
お姉ちゃんの花束を取りに行くために。