第3章 響く音はひろがりとどく
虚の攻撃を掻い潜りながら足を止めたのは銀杏の樹の根本。
いまは虚から千春ちゃんを離さなくては。
抱き下ろしたまま、告げる。
「大丈夫だよ、ここで待ってて。」
「…………」
震えている。声も出ずに瞳に涙をいっぱい溜めて。
死覇装からは手が離れなかった。
安心してほしくて、私は真っ直ぐ目をみて告げる。
「信じて………千春ちゃん。」
一瞬強く握られた死覇装だったが、
やがて…ゆっくりと頷いてくれた。
「ありがとう。何かあれば………」
「鳴らすよ、鈴…。」
千春ちゃんの腕に巻いてあるもの。
そっと指先に触れる、銀糸の紐に絡む鈴。
「気をけ…て…………お姉ちゃん……」
千春ちゃん自身、相当怖い思いをしているはずなのに、自分のためにと案じた言葉をかけてくれた。
それが、たまらなく心臓を掴まれたみたいに苦しくて。
でも、安心してほしくて、にこりと微笑んで頭をなでる。
「うん、行ってくる!」
そこからは、瞬歩でとんだ。
早く戻ろう。
今にも崩れてしまうかもしれない彼女の心に、笑って寄り添って安心できる様に。