第3章 響く音はひろがりとどく
目的地の銀杏の樹がある交差点へと辿り着く。
柵に腰掛け、足をプラプラさせている千春ちゃんの姿があった。
「話は出来たかな?」
「うん…ちゃんとありがとうって言えたよ。」
「お母さんがね、花束に気づいてくれて
良かったねって言ってくれたの。お父さんも泣いてだけど、最後は笑ってくれた。」
どこかすっきりした顔を千春ちゃんはしていた。
「そっか、良かった。」
今は素直に、この言葉がいえる。
初めて会った日のこの子とは全く違っていた。
待ってほしいと告げてきた時の悲しそうな顔が、今はない。
願いを聞いてあげれて、それがささやかでも千春ちゃんの救いになればと思った。
実際には私にとっても
いい時間になったのは本当だから。
「お母さん達がくれたお花もすごくきれいなんだよ!」
「本当?見てもいい?」
「もちろん!」
にこにこと手招きする千春ちゃんの元へと足を向けた。
でも、出来なかった。
ズドオオン‼︎
突然現れた何かが、千春ちゃんを襲ったから。