第2章 戸惑いこころ
pm12:05
放課後を迎えて、いま僕は屋上にいる。
理由は、黒崎に昨晩言われて呼び出されたから。
屋上にある柵に寄りかかりながら黒崎は立っている。
ブンっと何か飛んできて受け止めると、ブラックの缶コーヒーだった。
「飲めよ、特別に奢ってやったんだ。」
「………ほしいなんて僕は言ってないぞ。」
ムッと思ったが、黒崎はもうジュースを飲んでいる。
仕方ないと溜息混じりにフルタブを開けた。
「石田……お前さ、あいつとなんかあっただろ。」
「あいつ?誰のことかな。」
「こんな時まで惚けんのか。石津だよ」
黒崎の強い目が僕に向いていたが、僕も逸らさずに話す。
「なんで彼女なんだい?」
「千春にお前んち案内した時に考えたんだよ。まあ、それだけじゃねぇけど。」
ありえないなと目線を黒崎に向けて、溜息混じりに眼鏡を直す。
「百歩譲って何かあったとしても、どうして君に言わなきゃいけないんだ。」
「テメェの問題だから、関係ないってか?」
「………………………」
黒崎の言葉に二の句が告げなくなってしまう。
「確かにそうだな。お前がどう考えてるかなんて知らねーよ。でも石津はお前に真っ直ぐだぞ。話しかけ辛いけど、仲良くしてぇってな。奇特なやつだよ本当。」
やれやれと手を広げる黒崎にムカっときて、思わず拳を握ってしまう。
「………なんでそこまで言われなきゃいけない。彼女とは何にもないんだ。君に何か言われても困るね。」
少しの間が空き、黒崎は真剣な顔をする。
「じゃあ、石津を見る時のあからさまに辛そうな顔はなんなんだよ」
「………!」
まさかと、思う。
驚いて言葉が出なかった。
「自分で気付いてるか知らないけどな、いつも酷い顔してんだぞ。」
近づいて来る気配に動けずにいる。
目の前に立った黒崎は口を開いた。
「お前は、石津のことをちゃんと見たことあるか?」
響いた言葉に思考は止まる。
駄目だ 何も 言えない
目を背けてしまう。
耳を塞いでしまいたくなる。
「………だから、その顔が酷えって言ってんだよ。」
がしがしと頭を掻いて微かに聞こえた言葉を残し、居心地悪そうな咳払いをした。
そのあと、黒崎は何も言わずに屋上を出て行った。