第2章 戸惑いこころ
「いきなりどうしたの井上さん?!」
慌てて告げると、居住まいを正した井上さんは僕を真っ直ぐ見つめてきた。
「夕方の石津さんとの話を、聴いちゃったから………。黙ってるのも嫌だったし、石田くんきっと誰にも知られたくない事だろうって。だから謝りにきたの。」
申し訳なさそうに何度も頭を下げる井上さんに僕はふっと息をはく。
「顔をあげてよ。」
僕の言葉にゆっくりとこちらに視線を向ける彼女に苦笑う。
「井上さんが謝ることなんて何ひとつ無いよ。僕が勝手にした事だし、僕の気持ちの問題だ。」
「だから…気にしなくていいんだ」
その言葉で、井上さんは押し黙ってしまう。
瞬間、揺らいだ瞳も意思をもつそれへと変わる。
「石田くん。石津さんはね、歩み寄ろうとしてるよ。たぶん今も、それは変わらないと思う」
時が止まったように感じた。
まさか、と思う。
どう言えばいいか分からなくなる。
考えていると、井上さんは帰り支度をしていた。
「送るよ!」
「大丈夫だよ、そんなにアパート離れてないし走って帰るから!」
玄関まで送ると振り返る井上さん。
「美味しく食べてね!おやすみなさい」
「ああ。気をつけて」
閉まった扉に消えた後ろ姿。
長い、ため息が出る。