第2章 戸惑いこころ
『こんばんは浦原さん。突然きてすいません。』
『石田さんじゃないですか、珍し………ってずぶ濡れじゃないですか!中に入ってください』
普段滅多に訪れない彼がここにくるのも驚いたが、さらに驚いたのはその姿。
バケツをひっくり返したようにびしょ濡れで
どうしたのかと思う。
『ここで大丈夫です。いきなりで失礼なんですが、彼女にこの傘を返してほしいんです。』
『はて。彼女とは?』
『………石津さんです』
惚ければ、少しの間の後にでた名前。
『傘?ああ、確かに石津さんのだ。
しかし借りたのならご自身で返されては?』
『………………』
至極真っ当な台詞にも無言。
どうにも歯切れが悪い。
普段きっちりとする彼にとっては珍しい言動。
『何か事情がおありのようっスね、どうも。
わかりました、こちらでお返ししておきます』
『すいません。ありがとうございます』
『返すのはこちらでしますが、それは石津さん本人にちゃんと言ってあげてくださいよ』
『………………はい』
ようやく彷徨っていた視線はこちらにむいたようだ。
そんな会話をして石田さんから受け取った傘。
「………………そうですか。教えてくれてありがとうございます。傘を干してから、ご飯のお手伝いしにいきますね!」
アタシの言葉に彼女は笑ってそう応えた。
サンダルを履いて傘をひろげる彼女の後ろ姿は、なんだか寂しそうにみえる。
だけど、何かを言うつもりはない。
それをするのはきっと、彼だろうから。
アタシはただ見守るだけっス。