第2章 戸惑いこころ
交差点のいつもの柵の上に着地したけど、彼女の姿はなくて。
見事に紅葉した銀杏は雨の中でも美しくそびえている。
辺りを探れば、一際大きな銀杏の木の上に千春ちゃんの気配がした。
瞬歩で移れば、膝を抱えて幹に寄りかかっていた。
「遅くなってごめんね、千春ちゃん。」
「来ないかと思った………って!なんでそんなにずぶ濡れなの?!雨止んできてるのに!」
「傘忘れたから、走って来ちゃった。」
頭を撫でながら惚け笑う私の姿に呆れたのか驚いたのか、ハンカチを渡してくれた。
「ありがとう。今日はどんな1日だった?」
「ずっと雨宿り。以上!……だから、お姉ちゃん来てくれて、嬉しいよ。」
その言葉に、頬が赤くなるのがわかる。
「やっぱり、敵わないなあ。だから会いたくなるんだよ。」
2人してえへへっと微笑む。
無邪気な笑顔で千春ちゃんは私に話をふる。
「お姉ちゃんは?学校とか、あの変な人とはどうなの?」
一瞬思考が止まるけど、口は動かした。
「………相変わらず、かな。何にもないよ。」
「ふーーん。」
「何にも、ないよ?」
「ふーーーん。」
あんまり信じてくれてない声色と顔だ。
ジト目で見てくる瞳が痛い。
「その人ってどんな人なの?」
「え?どんなって…
背が高くて、眼鏡してて…男の人で…」
「分かりづらい人なんだね。」
戸惑いながらも逆に千春ちゃんに聞いてみる。
「でもどうして聞くの?」
「いや、変な人って言うからどんな人かと思ったんだよ。」
「そっか………」
府に落ちないし、なんとなく、言葉に詰まってしまう私。
話を変えようと渡したお守り鈴の話をする。
「そういえば、あれから変わった事はない?」
「全然だよ。お姉ちゃんのくれた鈴の紐一回も鳴らすような事なんておきないと思う。」
腕に巻いた銀糸の紐と鈴は、ちりんと涼やかに鳴った。
「それが何よりだよ。明日が終わるまで安全に元気でいなくちゃ。」
「………うん。」
雨が完全に止んだ様で、銀杏の葉から時折落ちていた滴も無くなった。
ハンカチはちゃんと洗って返すことを約束して、千春ちゃんと分かれた。
手を振り続けて、お姉ちゃんの姿が見えなくなった。
なんとなく、様子がおかしい気がした。
「よし、お散歩しながら気晴らし!」
銀杏の木から地上に降りて私は歩き出した。