第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
am 7:48 空座第一高等学校 3-A教室前
「………間に合って、よかった………」
余裕を持って登校した私は、立て続けに2件の虚退治の指令が入った事で、ギリギリになってしまったのだ。
走り続けた足は痛いが、無事に着いた安心から、汗を拭ってひと息つく。
本当は、休んでいた間の事や昨晩に聴いたボイスメッセージのお礼をみなさんにしたかったのだが……鳴り響いたチャイムの音で断念する。
1番時間の取れるであろう昼休みに、リベンジしよう。
そんなことを頭で考えていると、廊下の向こうから恩智先生の歩いてくる姿が見えた。
先生も私に気づいて、視線が合う。
「やっと来たか、おはよう石津。
体調良くなったみたいだな。」
「おはようございます、先生。はい…………その、良くなりました。」
欠席の電話は浦原さんが毎回していてくれたのだと知った事で、私は自分がそれを忘れていた事に思い至る。
内心焦るが、それと同時に先生への嘘と浦原さんへの申し訳なさも感じた。
「ま、病み上がりだし無理はしないで今日を過ごせよ。あと、配布プリント預かってるから時間ある時に職員室においで。」
「お心遣いありがとうございます。
休み時間に行きますね」
そんな会話をしながら、教室へと足を運ぶ。
久しぶりの学校が始まる。