第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「ありがとう、みんな。
ありがとう、黒崎くん。
………と、あれ石田くんは?」
「あ、石田なら職員室行くって少し前に出てったよ。もう戻るんじゃない?」
「そっか、ありがとうたつきちゃん。
行ってみるね。」
「あ、いたいた石田くん!
さっき話したやつね、もう石田くんで最後なんだ。
だから、録音しておしまいでいいから。」
「え………もう始めてたんだね。て、録音してるのこれ?」
「うん!終わったら教室にいるから持ってきてね。」
「井上さんっ………!行っちゃった。
いきなりだな、もう…………。
元気にしてるかい?
無理をさせてしまっていて、すまない。
学校になかなか来れないのは、虚退治を任せきりだからだよね。
来れても、すぐに理由を付けて
いつも石津さんが行ってくれる。
仕方がないとはいえ、何もしてない事が歯痒くてね。
僕は 石津さんが
疲れてないか 怪我してないか
抱え込んでいないか
なんて石津さんが聞いたら、お節介な事考えちゃって。
考えるだけなら簡単だよね。
でも 頑張りすぎてしまう君が気がかりなんだ。
だから困った事があれば
いつでも電話してきてくれていい。
石津さんの力になりたいから。
それとね。
みんな石津さんに会えなくて寂しいって話していたから、来てくれたら絶対喜ぶと思うんだ。
だから みんなが待ってるよ。
君が来てくれること。
僕も 会えたらいいなって 思ってるから。