第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
夕食も入浴も済ませて、今日の授業の録音を一通り聞き終わらせた。
疲れた肩を伸ばせば、ぱきりと音がしてー釣られるように溢れたため息。
考査まではあまり時間がない中で、せめて追試は逃れたいと、決まって点が取れない数学は念入りに勉強しなければいけない。
このレコーダーも、石田さんがくれた教科書のコピーのファイルも、本当に助かっている。
数字の羅列だけでも頭が痛いのに、ただでさえ分かりにくい科目。
授業の録音で日々の遅れを無くして、ファイルには説明や関連付いた内容があって、時間はかかってもなんとかついていけるのだ。
でもやっぱり……………。
わからないものは、わからない!!
また石田さんや織姫さんに相談してみよう。
忙しい中で申し訳ないがそう出来れば、一人で悩むよりもっといい勉強の仕方があるはず。
よしっと、気持ちを切り替えるためにひとり頷く。
電源を落とそうと掴んだレコーダーを見て、ふと、石田さんの言葉を思い出した。
『長くなるけど、聴いてみて。』
頭をよぎった言葉に誘われて、せっかくだからと布団に入りながらイヤホンをつけて聴いてみることにしよう。